サーチファンド・ジャパン
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 Interview #

15

2026

 年

7

 月

創業者とサーチャーが語る、アットワールド社の事業承継

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浜端昌也(創業者・前代表) x 上田顕(現代表)

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vol.2 | 社員の未来を託す。-アットワールド承継の想い-

―ここからはお二人の出会いについてお伺いします。上田さんはサーチ活動を通じ、数ある会社の中で、アットワールド社に出会います。強く惹かれた理由は何だったのでしょうか。

(上田)良好な業績であられたのは当然ですが、それに加え、自分が次に向き合いたいテーマが「グローバル」であったため、事業内容にとても関心を持ちました。私自身も留学経験がありますし、銀行に勤めていた時代からグローバルビジネスに関わってきたので、事業テーマとの相性は強く感じました。

 高校生の正規留学支援は、単なる語学学習の支援ではありません。人格形成にも影響する大事な時期に関わる仕事で、社会的意義が非常に大きいと考えています。そこに自分が経営者として入る意味を感じられたことが、一番大きかったと思います。正直に言えば、他にもいろいろな会社様を検討しましたが、「これを本気で自分がやるのか」と腹落ちしたのは、アットワールド社でした。

―一方で、浜端さんにとっても事業承継は大きな意思決定だったと思います。アットワールドの次のステージや事業承継について考え始めたのは、どのようなタイミングだったのでしょうか。

(浜端)もともと、私は「死ぬまで働きたい」というタイプではありません。タイミングが来たら次の人に託すことは、意識はしていました。本気で考え始めたのは40代半ば、コロナが流行る少し前だったと思います。もちろん経営を続ける選択肢がなかったわけではないですが、自分の人生設計としても、会社にとっても、どこかで次の経営者へバトンを渡すタイミングが来ると感じていました。

―上田さんと初めてお会いしたとき、率直にどのような印象を持たれましたか。また、サーチファンド・ジャパンに対してはどのように受け止められましたか。

(浜端)上田さんは立派なキャリアをお持ちで、正直「うちと釣り合わないのでは。もっと大きな会社や別の文脈で活躍する人なのではないか。」と思いました。だから「なぜ、うちなんですか」と率直に聞いた記憶があります。実際にお会いすると、とにかくよく喋る人だな、というのが第一印象でした(笑)。同時に、経営経験の厚みはすぐに伝わってきました。

 サーチファンド・ジャパンの皆さんに対しては、優秀な方々なのにすごくアットホームな雰囲気を感じました。だから、構える感じはなかったですね。一方、検討が具体化してからは、上田さんも、サーチファンド・ジャパンの皆さんも、事業や組織への理解を一段深めるため、細部まで丁寧に確認し、曖昧さを残さず整理してくれました。対話は終始穏やかでありながら、論点の捉え方や検討の精度には妥協がなく、プロフェッショナルとしての高い水準が印象に残っています。

―最終的に「上田さんに任せてもよい」と思えた決め手は何でしたか。

(浜端)私は、社員のみんながどうなるのかを第一に考えていました。上田さん本人に対しては、能力も経験も十分ですし、一切不安はありませんでした。気にしていたのは、「社員とうまくやれるかな」ということだけです。安定感で考えるなら、例えば上場企業の傘下になるというような選択もあったかもしれません。でも、社員の未来を考えたときに、一番しっくりきたのが上田さんでした。上田さんのもとでなら、社員がより成長できるだろうと確信し、承継を決断しました。

―事業承継はある瞬間に終わるものではなく、連続したプロセスだと思います。事業承継の過程では、どのようなことに一番気を遣われましたか。

(浜端)決まった後が本当に大変でした。2025年5月に体制が変わってからの3週間程度、毎晩悪夢を見るほどプレッシャーを感じていました。何が苦しかったかというと、とにかく社員が一人も欠けてほしくなかった。もちろん承継が終わって一年経ったうえで「合わない」となって誰かが辞めるのは仕方ない。でも、ただ経営者が入れ替わったというだけで、何も見ずに拒否反応が起きることだけは避けたかった。一方で、私が前に出るわけにもいかない。

 これまで「浜端カンパニー」だった会社で、どうやって自分の影響力を消していくか、そのバランスに非常に神経をすり減らしました。私が前に出すぎてしまうと組織が次へ進まず、上田さんの立場が難しくなる。その意味では、承継後の最初の数カ月が人生で一番プレッシャーがありました。これまでは、自分や社員のために経営をしてきましたが、承継の局面では、はじめて他人のために経営をしている感覚がありました。そのプレッシャーは想像以上でした。

(上田)私は比較的淡々としていました。これまで外から経営に入る経験を何度も積んできたこともあって、初動は普段通りでした。ただ、社員の皆さんから浜端さんに対する強いリスペクトがあることも感じていたので、まずはそこを踏襲しようと思っていました。極端に言えば、「浜端さんが言っているから、こうなんです」というトーンでよかったくらいです。

 これまで経営してきた会社とフェーズが異なり、アットワールド社は再生や改革局面ではなく、まさに事業承継でした。だから、大きく変革しようという意識はありませんでした。浜端さんが作ってきた良いところには一切手を入れず、自分がアドオンできる部分、マーケティング、ブランディング、バックオフィス、組織作りなど、社員のオペレーションが大きく変わらないところから着手していく。その線引きをとても意識していました。

―会社としても大きな転換点となったと思います。社員の皆様には、どのように承継を伝えられたのでしょうか。

(浜端)全員に事前に丁寧に説明して回る、という形は取りませんでした。全体ミーティングで、まず自分の考えと決断を淡々と伝えました。意識していたのは、上田さんのことをまだ何も知らない段階で、先に不安だけを大きくしないことでした。かなり塩対応だったと思います。でも、その方が直感的に良いと思っていました。私としては、「上田さんが必ず会社を良くしてくれる。だから、まずは上田さんの力量を見てから判断してくれ。」というメッセージをはっきり伝えました。もちろん、社員からすれば不安だらけだったと思います。ただ、私が検討を重ねてベストだと思う選択をしたことを信じて上田さんをフラットに評価してほしいと感じていました。だからこそ、余計な説明をしすぎず、まずは上田さんを見てもらうということを第一にしました。

―上田さんへの強い信頼があってのご判断だったと思います。上田さんが社長に就任されてから、最初に取り組んだことは何でしたか。

(上田)私は着任後すぐに、社員全員と一対一で話しました。これはいつも変わらないスタイルで、新しい会社に入ったときは、どんな仕事観を持っているのか、どういう生き方をしてきたのか、その人となりを知るところから始めます。まず驚いたことは、浜端さんのスタイルがかなり個別自律型だったことです。社員同士でもお互いの仕事を深く共有していない。その分、浜端さんから多くを権限委譲されていて、皆さん自律されている。プロフェッショナルとしての意識が極めて高い組織だなと感じました。加えて、ヒアリングを通じて現場の理解を進めました。事業構造、数字、管理の流れを一つずつ把握していきました。

 最初から大きな改革を打ち出すのではなく、まずは人と事業を理解することを優先しました。社員の皆さんが何を大切にしているのか、どこに誇りを持っているのか、逆にどこに不便や課題を感じているのか。まずは知ることから始めていきました。

―最初から大きく変えるのではなく、まずは一人ひとりと向き合い、人と事業を理解するところから始められたのですね。承継後、約1年間が経ちました。上田さんがアットワールドで取り組んできたことについて教えてください。

(上田)実務面では、マーケティングとバックオフィスの整理が大きかったと思います。特に問い合わせや集客の強化には早い段階から手を入れました。また、バックオフィスは経営の基盤なので、管理帳票やデータの流れを整え、必要な情報が適切な形で降りてくるように、自分でかなり手を動かしました。

 その際に強く意識したのは、「現場のやり方を壊さない」ということです。みんなが顧客や提携校へ意識を向けている時間を増やしたかったので、余計な入力や余計な管理はなるべく効率化し、自分でできることは自分でやるというスタンスをとりました。

 また、カルチャー面では、浜端さんの色を残しながらも、自分なりのオープンさや、会社全体をチームとして見る感覚は少しずつ入れてきました。最初の3カ月は、社員からすれば「何を言っているんだろう」と感じる場面もあったと思います。ただ、そこで負荷を現場に押し付けるのではなく、自分で手を動かしながら形にしていったことで、少しずつ理解してもらえたのではないかと思います。

―逆に、変えなかったことは何でしょうか。

(上田)一番変えなかったのは、浜端さんや社員の皆さんが築いてきた信頼の土台です。生徒や保護者に対して丁寧に向き合うこと、提携先との関係を大事にすること、そして現場のプロフェッショナルを信じて任せること。この辺りは、アットワールドらしさの核なので、崩さないようにかなり意識しました。

私の経営のスタイルは、無駄なことをやらないことです。ガチガチの管理を持ち込むつもりはなくて、本当に必要な事項に絞って、選択と集中で回していく。何がこの会社の強みで、何を変えてはいけないのか。その見極めを間違えないようにしていました。

―承継後、浜端さんはアットワールドにどのような形で関わられているのでしょうか。

(浜端)最初の数カ月はフルで入りました。売上がどうこうというより、元々自分についてきてくれた社員たちが、どうすれば上田さんのもとへ気持ちよく移っていけるか、それが一番大きなテーマでした。自分が頑張っている姿を見せることで、社員たちにも「頑張ってみよう」と思ってもらえればと思っていました。人生で一番真面目に仕事をした3カ月でしたね。社員からは相談があったときに応じる、という立ち位置です。今は、たまに会社へ来て経営会議に出たり、今どうなっているかを見せてもらったりもしますが、基本は上田さんに任せています。自分がいない状態で会社がどう進むのかを見られるのは、贅沢な経験でもありますし、当社が買い手の立場としてのM&Aの検討など、これまで経験しなかった動きに触れられるのも面白いですね。上田さんと二人でトップ面談行ったりもしていますし、お相手のオーナーさんへ「私もついこの間までそちら側にいました」と冗談を言ったり。

―ご自身が長年大切に育ててきた事業を譲るという過程は、感情的にも難しい側面があったと思います。どのように整理されたのでしょうか。

(浜端)でも、それが事業承継ですよね。自分が大切に育ててきた会社であっても、ある時点で自分の手元から離し、次の経営者に信じて託す。その覚悟も含めて、事業承継だと受け止めていました。

―最初は深く関わりながら、少しずつ上田さんにバトンを渡していく。距離感を作ることが、承継の大事なプロセスだったのですね。改めて一年ほど経って、浜端さんから見て、アットワールドの変化をどのように感じておられますか。

(浜端)一番は、社員が会社全体を意識して仕事をするようになったことだと思います。以前は、みんな自分の担当領域、いわば「木」は見えていたけれど、「森」までは見えていなかった。それは、私の経営スタイルでもありました。個別に役割を任せて、それぞれが自立して頑張る。そういう形でずっとやってきました。

 一方で、今は会社のどの部分に自身がいて、自身の業務がどのように組織に役立っているのかが、具体的に見えるようになってきて、皆がやるべきことをしっかりと理解して連携して動けるようになってきたと感じています。上田さんはかなり情報をオープンにするので、最初は「そこまで見せて大丈夫?」と心配するくらいでした(笑)。でも、結果的にはそれがよかったんでしょうね。私が安心したのは、社員が上田さんを理解し始めたと感じた瞬間でした。「この人はやるな」と現場が感じ始めてから、自分も少しずつ手を離せるようになっていきました。

 経営者が変わるというのは、社員にとって大きな出来事です。最初から全員が納得するものではないと思います。でも、上田さんが実際に手を動かし、会社を見て、社員と向き合うことで、少しずつ社員との信頼関係ができていった。その過程を見られたことは、私にとっても大きかったです。

―「木ではなく森をみる」という意識の変化は、言葉にすると分かりやすい一方、実際にはとても難しいことだと思います。組織のカルチャーを変えていくうえで、上田さんは何を意識されていたのでしょうか。

(上田)私は、会社はチームスポーツだと思っています。一人ひとりが自分の役割を果たすことは大事ですが、それだけでは会社は強くなりません。カウンセラー、手配、マーケティング、バックオフィス、それぞれの仕事がつながっていて、誰か一人だけで成果を出しているわけではない。だから、まずは会社全体がどう動いているのかを見えるようにすることを意識しました。良いことだけではなく、悪いことも含めてオープンにする。会社が今どこにいて、何を目指していて、どこに課題があるのかを、できるだけ共有するようにしています。

 もう一つは、ルールを見えるようにすることです。カウンセラーは数字で成果が見えやすい一方で、手配やバックオフィスの仕事は成果が見えにくい。でも、会社としてはどちらも大事です。マーケティングがなければ問い合わせは生まれませんし、手配やバックオフィスがきちんと回らなければ、お客様への価値提供もできません。つまり、誰が偉いという話ではなく、それぞれの役割がつながっている。みんなでパイを大きくしていけば、結果としてみんなに返ってくる。そういう考え方を、できるだけ分かりやすく伝えるように心掛けています。

―上田さんが経営を引き継いでみて、改めてアットワールドの強みはどこにあると感じましたか。そして、その先にどんな会社を目指していますか。

(上田)改めて実感しているのは、海外からの厚い信頼です。アットワールドが展開するD-Sideというブランドが、海外の教育機関や関係者の中できちんと通じている。これは一朝一夕では作れないアセットですし、浜端さんと社員の皆さんが丁寧な仕事を積み重ねてきた結果だと思います。直近でも留学業界のアカデミー賞とも称される国際アワード「ST Secondary School Awards 2026」にて、アジア最優秀エージェントを受賞しました(ご参考)。中高生の留学部門で日本のエージェントが大賞を受賞したのは初めてのことです。

 もう一つは、スタッフの質です。普段の仕事が本当に丁寧で、任せたことをきちんとやり切る。自立していて、プロフェッショナル意識が高い。これは承継前にも感じていましたが、入ってみてさらに強く実感しました。

 そういった会社としての強みを生かして、これからはアジアNo.1を名実ともに目指していきたいと思っています。世界で勝てる留学エージェントになる。そのために何より大事なのは、日本人に一人でも多く海外留学の機会を届けることです。留学は語学のためだけではなく、新しい世界を知り、多様な価値観に触れ、挑戦するマインドを育てる機会だと思っています。その価値を、より多くの人に届けられる会社にしていきたいですね。

―そうした強みを土台に、アットワールドは次のステージに進もうとしているのですね。最後に、留学支援という領域の将来性について、お二人の考えを聞かせてください。

(上田)AIが進化していく中で、語学留学そのものの価値は今後減っていくと想定しています。ただ、それでも留学の本質は失われません。特に弊社が強い正規留学・交換留学や探求留学などはより存在感を増してきています。大事なのは、新しい世界を知ることや、自分と違うものを受け入れるマインドを持つことです。そういう人材がこれからの社会でより重要になっていく。留学の価値はむしろ再定義されていくと思っています。同時に、留学の前後も含めて、支援領域を広げていくことが本当の意味での顧客価値向上につながるとも考えています。

(浜端)私も同じです。もともと私も、語学能力そのものを留学の目的として考えてきたわけではありません。文化の違いを知ること、世界の広さを知ること、多様な考えがあると知ること、そしてその中で打ちのめされながらも這い上がる経験をすること。この経験が若い時期にできる価値は非常に大きいと思います。だからこそ、これからも留学する人が増えて、その経験が人の成長につながり、やがて日本に還元される。そういった好循環をこれまで通り、上田さんには築いていってほしいと思っています。

 アットワールドが大事にしてきたのは、ただ海外へ送り出すことではなく、その人の夢や将来に関わるということです。その想いを上田さんが受け継ぎ、さらに広げてくれるのであれば、創業者としてこれほど嬉しいことはありません。

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▼創業者の想いを、次の経営者へ。 留学支援を通じて、未来を紡ぐアットワールド社の事業承継

vol.1 | 留学は、人を強くする。-アットワールド創業者の想い-

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