コラム

【サーチャーインタビュー】大屋貴史氏に聞く、サーチ活動の実態(後編)

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伊藤:大屋さんが企業を探したり、紹介された数十社のから検討を進める企業を選ぶ基準はどういったところでしょうか?

大屋:まずは自分の経験や強みが活きる業界なのかどうかが一番です。さきほどの数十件の中には、業績もすばらしくて事業承継の意思もあるが、私には全く土地勘がない業界・企業も結構あります。情報を頂ければ当然検討はしますが、その会社をどう経営していこうか、どう成長させようかと考えると、土地勘がないと絵が描けないんです。オーナーさんに「素人ですけど頑張ります、譲ってください」では、話にならないと思うんですよね。なので、まずは自分が貢献できる分野かどうかが一番。

二つ目は、投資家の目線とも関連するんですが、ある程度安定的にキャッシュを生み出してビジネスモデルが完成している企業が望ましいと思います。ただ、完成されすぎていてもまた難しい。現オーナーがピカピカでこれ以上自分がうまく経営できないという会社は、これはこれで成長の絵が描きにくい。ある程度課題があるということは伸びしろでもあるんです。なので、ある程度ビジネスは回っているけれど自分ならなんとかできる課題もある、というのが理想ですね。

伊藤:私が大屋さんのオーナー面談に同席している中で感じるのは、オーナー様はサーチャーのことを「この人は後継者としてふさわしいのか?」という目で見ますよね。当たり前ですが。特に事業基盤や組織がしっかりしている会社ほどその傾向があると感じます。

サーチャー応募者と話していて、「こういうビジネスモデルの企業が投資に向いているので、ターゲットにしたい」という発言がよく出るんですが、それに加えて「自分はこんな貢献ができます」という視点をもつことは非常に重要だと思います。大屋さんは、ご自身の貢献可能性やその根拠となるエピソード等を非常に解像度高く具体的にお話されるので、その点がオーナー面談で好印象となっているイメージがあります。

大屋:そうですね。オーナー目線に立つと、やはり素人で手を上げると難しいと思います。一方でやっぱりサーチファンドという仕組みは、経験の少ない若手がチャレンジするという意義もあると思うので、あまり経験を求めてしまうとハードルが上がってしまう。これは結構難しいところだなと思います。

伊藤:そうですね。当社と活動しているサーチャーには20代の方もいて、先日オーナー面談をしました。彼はその業界での経験はなかったのですが、オーナーからの印象は非常に良かったです。彼の場合は、経験のなさを取り繕わずに、自分にできる動き方や強みを誠実に話していました。個人の強みは必ずしも経験だけではないので、ご自身のできることを掘り下げて語れるようにしておくこと、また誠実に向き合うことが大事だと感じました。

伊藤:では、別の質問をさせてください。サーチファンド・ジャパンのサポート体制について伺えますか?サーチ活動に興味はあるけれど、サーチファンド・ジャパンが何をどこまでやってくれるの?と気になる人は多いと思います。改善してほしい点も含めて忌憚なくお話しください。

大屋:まずサーチファンドの一連の流れをご自身で経験されている伊藤さんが代表をしているというのが何にも代えがたい知見で、経験者からのアドバイスをもらえるのは非常に安心感があります。伊藤さんとはほぼ毎日のように会話をしています。具体的に話が進んだとある案件では、銀行との融資の交渉なども伊藤さんにリード頂きました。

それから日本政策投資銀行から参画されている巻島さんが、伊藤さんと私との定例ミーティングに毎回出席してくれて、M&Aや投資の観点から極めて有益なアドバイスを頂けています。私はM&Aは素人なので、この知見を頂けるのはすごく有難い。

三点目はやっぱり日本M&Aセンターさんですよね。仮に私がソーシング能力が乏しかったとしても、なんとかM&Aセンターさん経由でいろいろご紹介いただける。この力は非常に大きいと思います。

一方で、改善してほしい点があるとすると、なんだろう、やっぱりまだM&Aを実現できていないので、引き続き粘り強くやっていただきたいなと思います。特に案件の紹介は多いに越したことはないので、事業承継であれば何でもよいわけではなく一定の投資基準はあるとは思いますが、ご紹介いただければ何かしら実現できる芽があるかもしれないので、一件でも多くご紹介いただきたいというのが本音です(笑)

逆に言うとサーチファンドの基本は独力で案件を探すのが当たり前の中、サーチファンド・ジャパン経由で案件の紹介を定期的にいただけるのは、何にも代えがたいとは思います。というわけで、引き続きご紹介よろしくお願いします。

伊藤:ありがとうございます。今話に出た投資基準に関しては、当社の基準は当然ありますし、その基準は投資家によって違います。我々は現時点ではファンドとしてもサーチャーに対しても、しっかりしたリターンを出せることを重視していきたいと思っています。

ただこれが絶対的な正解でもなくて、リターンを犠牲にしてでもやるべき案件や、リターンを求めない投資家がいてもよいと思います。我々の投資基準や方針に合わないサーチャーでも、別の基準をもつ投資家とサーチファンドに取り組めるような厚みが出てくるとよいなと思いますし、我々もゆくゆくは幅広い目線の投資ができればと思っています。

そんな基準に見合う案件をしっかりご紹介することへの期待は感じていますので、引き続き頑張ります。

大屋:投資リターンを気にしない事業承継ファンドもいらっしゃいますよね。それぞれの背景や事情はあると思いますが、サーチファンド・ジャパンは、しっかりと投資事業としてファンドにもサーチャーにもリターンを出すモデルだと思います。やっぱり、会社を引き継いで結果を出した結果、それに報われるモデルでないとサーチャーも来てくれないですよね。利益のことばかり考えているのも違うとは思いますが、そこのバランスが必要だと思います。

伊藤:優秀なビジネスマンにとって、コンサル、PEファンド、スタートアップなどの他のキャリアオプションと比べてサーチファンドが魅力的なキャリアになることが重要だと思っているので、経済的リターン含めてそういう設計にしているつもりです。やりがい搾取では継続的な発展は難しいと思っています。

伊藤:サーチ活動を始められて、思ったよりも良かった、逆に思ったよりも苦労した点をそれぞれ挙げていただけますか?

大屋:サーチャーという活動を実際に始めてみて、これは自分を売り込む仕事なんだと思いました。サーチ活動中に何をするかと言うと、もちろん承継企業を探すんですが、探すというよりオーナーさんに認めて頂くんですよね。承継対象企業を探して見極めると同時に、自分がオーナーに認めていただくことでもあると思うに至りました。

そうすると自分の何を認めてもらうんだろうと、自分を見つめ直す時間がすごく増えました。しかも、商品を認めてもらうのであれば商品を作りこめばいいんですが、自分の経験は変えられないので、どう自分のことを誠実に伝えるかの繰り返しなんです。そうすると自分の内面や過去のキャリアを掘り下げることになるので、思った以上に自分自身と向き合う時間を持てており、企業経営を始めた後にも活きる非常に意義のある時間だと感じています。この自分と向き合う時間が増えたというのは、想像していなかった良かった点ですね。

一方で、想定はしていたけれど予想以上に苦労を感じているのは、M&Aを実現させる大変さです。まず、オーナーさんと面談をする前段階、事業承継を前提に話を進めていく段取りの大変さとか、山を越えてもまた山がある。M&Aの経験者だったら知ってることかもしれませんが、自分は素人なので一件成約するのにこれだけのことが必要なのかということは驚きでした。これは経験してみないとわからないところだと思います。

その点で、非常に手厚くサポート頂けるプロのチームがいるサーチファンド・ジャパンの存在はありがたいなと思います。

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伊藤:最後にサーチャーを目指す方に一言おねがいします。

大屋:サーチファンドは、企業オーナーにとっては事業承継のための選択肢という意義がありますが、一方でサーチャーの視点に立つと、日本から力のある経営者を輩出していくということが、もう一つの大事な意義だと思っています。ですので、ご自身のキャリアとして、会社を継ぐだけではなくて、自分の経営の力量を発揮してそれを世の中のために使いたいという志がある方は、是非サーチャーにチャレンジしていただきたいと思います。

伊藤:ありがとうございます。黎明期の日本のサーチファンド業界を開拓する人材が増えるよう、まずは最初の実績を創るべく我々も全力でサポートしたいと思います。

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